DAY13:PARIS〜何も変わらない朝、歯磨きを売ろうと決める
こんな朝早くから、健康に関心の高いパリッ子はセーヌの川岸をジョギングしている。停泊するハウスボートの住人は、鼻歌を歌いながらデッキに飾られた花に水をやっている。メトロに乗って、観光客たちがエッフェル塔にやってくる。街角のパン屋では、イスラム系の男がカウンターから身を乗り出して通勤途中のビジネスマンにコーヒーとブリオッシュを渡している。昨夜起きたパリ同時多発テロは、たぶんほとんどの人の日常を変えることはなかったのだと思う。悲しいことに、または、ちょっと言いにくいことだけど、ある意味喜ばしいことに。もちろん、犠牲者になった人や、家族のことを思うと、僕だって苦しくなる。ただ、その想像力は、日本にいる時のそれを大きく超えることがない。僕は、日本にいる友人が書いたfacebookのメッセージやコメントで事件の速報を知る。もはや物理的な距離は、自我と現実との距離にそれほど大きな意味をなさない。僕たちが情報だけを消費しているのであれば。 続きを読む