DAY3: LONDON TO AMSTERDAM〜またやっちゃいました
海外に行く度にやってしまうことがある。普通の人は多分ほとんどしたことがないと思うけど、僕はかなりの確率で、旅行中一回は飛行機に乗り遅れてしまうのだ。今年の春にサンフランシスコに行ったときなんて、こともあろうか帰国便の出発時間と到着時間を間違えて、数日滞在を延ばしてしまったぐらいだ。
分かっててわざとやってるだろうとか言う友人もいるのだけど、決してそんなことはなくて、これでもその時はそれなりに落ちこみ、次は絶対にこんなことがないように気をつけようと思うのだ。それでも同じことを繰り返してしまうのは、多分もう病気なんだと思う。
基本的に僕は、現実に起きることにはどんなことにも意味があると思っていて、今もうすでに、飛行機を逃した代わりにすることができたことを思い出し、まあこれはこれで良かったのかな、なんて考えているので、きっと遠くない将来にまたやってしまうんだろう。
とは言え、今日も何か特別なことが出来たわけでもなくて、朝から面倒なことばかり起きていた。
今回僕は日本から大量の商品を持ち込んでいるので、道中いかに効率よくそれらを運ぶかは大きな問題だ。税関で関税をとられたり、最悪没収されてしまったりしたら、元も子もない。また、ほぼ3日ごとに国から国へ移動するハードスケジュールの中、はかったら35kg以上あった荷物を常に持ち運ぶのはキツイ。
僕はそこで、イギリスに着いたら、重くてかさばる商品を最初のフリーマーケットに出店するバルセロナまで送ってしまおうと考えた。ヨーロッパではLCCで移動を繰り返すことになりそうなのだけど、LCCは航空チケット代が安い代わりに荷物を預け入れるためにお金が必要で、最低金額で運んで貰える20kg以内に抑えたいのだ。
というわけで、重い「キモノ」を中心に10kgほど小包に詰めて、バルセロナで滞在させてもらう人の家に送ることにしたのだ。ところがその小包を送ることに、非常に時間がかかった。話が長くなるので適当にはしょるけど、実は出国日の朝、何者かによるクレジットカードの不正使用が発覚し、メインのカードをとめられてしまっていたのだ。そのせいで送料の支払いに不要な苦労をしてしまい、滞在先から郵便局までの10分ほどの道のりを、重い荷物をかかえて2往復もすることになってしまった。
本当は朝一で荷物を発送して、少しはイギリスらしい観光地でもさらっと見て回ってから空港に行こうと思っていたのだけど、郵便局での仕事を終えた頃には昼近くになっていた。そこで僕は、郵便局の近くでやっていたマーケットをふらふらして、そこで昼食でもとることにした。マーケットにはお世辞にも僕がここで紹介したくなるような商品があったとは言えないけど、多様な民族が混ざり合ったカラフルでエキゾチックな本物のがらくた市は、なぜか心惹かれるモノがあった。日本は何もかもがキレイで整頓されていて過ごしやすいけど、こういう混沌から生み出されるパワーが全くない。
例えば、最近は日本でもポートランドがブームで、オシャレでオーガニックな街がもてはやされているけれど、ポートランドのようなユニークな街を作り出すもととなった、ヒッピー崩れやダメアーティストたちの、恥ずかしくなってしまうようなダサさと混沌を、まったく日本は理解しようとしない。コメディなので当然かなり誇張されているけれど、ACEホテルやサードウェーブコーヒーしか知らないでポートランド最高とか言っている人は、コメディシリーズの「Portlandia」を是非見て欲しい。英語がわからなくても、「うわ、ダサっ笑」ってなるはずだ。
僕が昨日買い物に出かけたShoreditchだってそうだ。このエリアは、元々若いアーティストや訳の分からない連中が集まって、時間をかけて洗練されていった界隈だそうだ。それが今は資本を持ったメディアエージェンシーや、そこに集まる「クリエイティブ」な連中を目当てに増えていった商業的なショップが地価を上げて、もともとそこを拠点にしていたような若い連中は、もう他のエリアに移った後だという。
日本で起きるブームのほとんどは、最初の勢いも混沌もすっかり無くなった後の、洗練しきった状態でやってくる。もちろんそれでも良いものはしっかりといいし、最初から最高の状態を手軽に味わえるのは、悪いことじゃない。でも、こういうムーブメントは、日本では起きることがないだろうな、といつも感じてしまう。このマーケットのように、それを必要としない人にとってはほとんどガラクタでしかないけど、昔は存在しなかったためにそこからどんな美しい花が開くかわからない文化の種を育む土壌がないのは寂しく感じることがある。昨日Shoreditchで一番人気の、オシャレなバーみたいなピザ屋で食べた高級ピザに決して負けないぐらいおいしい、小汚い屋台の数ポンドしかしないトルコピザをかじりながら、そんなことを考えた。日本でこのピザが食べられる時がくるとしたら、それはどんな店で、どんな人が出すピザになるんだろう。たぶん、この店のように、全てのセリフに”Daring”なんて付け加えて、人なつっこい笑顔を見せながら目の前でトルコ人のおばちゃんが作ってくれるピザにはならないんだろうな。ロンドンは何もかも高くて、そういう意味ではクソったれだけど、こういう店がやっていけるだけの余地がある。
まぁ、そんなことを考えながら、マーケットをふらふらして写真を撮ったりしていたら、すっかり遅くなって飛行機を逃したんだけどね。それでもいいや、って思っちゃう自分が常にいるのです。
あ、そうそう、あと、何度も郵便局に足を運んだおかげで、イギリスの郵便局で売っている封筒や段ボール箱がとてもかっこいいことに気づいた。いくつか買っておいたので、近いうちにショップにあげておきます。