DAY11-2:Airbnb Openで紹介された最新シェアリングエコノミーサイト5個

sharing economy session

このブログでは何度も出ている話だけど、去年の11月、年に一度世界中のAirbnbホストが集まって、おもてなしのスキル向上やホスト同士の親睦、Airbnbやシェアリングエコノミーの最先端情報を学ぶカンファレンス「Airbnb Open」に参加して来ました。今回はその中のセッション”Beyond Hosting: Airbnb & The Sharing Economy”(「ホスティングを超えたもの:Airbnbとシェアリングエコノミー」)で紹介された、最新のシェアリングエコノミーサイト5個を紹介します。どれも興味深く、シェアが未来にもたらす可能性の一端を覗き見せるサイトです。気になったものは是非実際にチェックしてみてください。英語ヘルプなど必要な方は、フェイスブックページで質問をどうぞ。

Peerby https://www.peerby.com/

peerbyPeerbyは、近所に住む人たちのネットワークを作り、主にたまにしか使わずに押し入れにしまわれているようなものを貸し借りすることができるサービスだ。登録ユーザーが自分が借りたいものをリクエストすると、近所のユーザに通知が届く。貸してもいい人がいたら、後は個人的にやりとりをして基本的に無料で貸し借りをすることになる。Peerbyの利用は無料で、現在のところ投資家から集めた資金で運用されているようだ。将来的には、貸し借りするものに掛ける保険と、配送サービスで収益をあげるプランらしい。この手のサービスは、シェアリングエコノミー黎明期からいくつか生まれては消えていっている。Peerbyの新しいところは、余分なものを持っている側ではなく、借りたいものがある側から呼びかけ、それに応える善意の近隣住民を探すところにある。シェアリングエコノミーの概念が一般化しつつある現在のタイミングで、最も期待されているサービスのようだ。日本からも登録できるようなので、実際登録してみたが、近所のネットワークの「ロック解除」を行うためには、少なくとも10名の登録ユーザが必要なようだ。そのため実際にアプリを試してみることができなかったが、今後数年の間に、日本でも同様のサービスが生まれてくることは必至だろう。

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Trov http://www.trov.com/

trov
今後より多くのものがシェアされていくとしたら、その時に必要になるステップは、自分が何を持っていて、何をシェアしていいのかリストする作業で、それはなかなか骨の折れる仕事だ。Peerbyの持つ側からではなく、持たない側からリクエストするというアプローチはその問題に対するシンプルでエレガントな解決策だと思うが、Trovは正攻法でその問題をクリアしようとしている。Trovは、個人が所有する家財道具のリストを作成するのを助けるアプリだ。Emailアカウントにリンクすると、メールで届く領収書を自動的にスキャンして、Trovが持つ商品データベースと照らし合わせ、自動的にその情報をリストに登録していく。面白いのは、データベース上の価値は市場価格とリンクしていて、たとえば不動産価格が上がった場合には自動的に持ち家の価格を調整してくれる点。実は僕もこのサービスが何をするためのものなのか、まだいまいちピンと来ていないのだけど、シェアリングエコノミーとの絡みで言うと、このサービスで登録した家財道具は、アイテムごとに1日単位の短期間から必要なだけ、好きな金額の保険を掛けられるという。セッションでは、ゲストが泊まりに来ている間だけ、家の中の特に大切なものにだけ保険をかけるような使い方ができる、と紹介されていた。

シェアしたものに万が一損害があったらどうするのかという点は、新しくシェアリングエコノミーへ参加する時にユーザーが感じる大きな障壁になる。これからのシェア時代を見越した、新しい保険サービスという位置づけを狙っているのかもしれない。

→Trov

Goodgym https://www.goodgym.org/

Goodgym
Goodgymは、今回のセッションで紹介されたサービスの中でも、最もユニークな方法でユニークなものをシェアするサービスだ。Goodgymのメンバーがシェアするのは「運動で消費されるエネルギー」。サイトの説明によれば「普通のジムは、エネルギーと人間の可能性の無駄遣い」だ。どうせ運動するならそのエネルギーを社会のために役立てるべきだ、という考えから、Goodgymでは独居老人の家をランニングコースに組み込んで訪問支援したり、トレーナー付きでコミュニティが必要とする肉体労働を提供して、労働力を必要とする場所とエネルギーを消費したい人を結びつけている。登録していないので定かではないが、このサイトも僕のやろうとしているOmiyaget.com同様、大々的なシステム化をする前にサービスに興味がある人のグループを作って、草の根活動的な方法で運用しているようだ。こういう、「ノリで始めてみました。でもやるからには真剣にやってみます」っていう感じのアプローチは、日本でももっと増えたらいいな、と思う。もっとビジネスに結びつけて考えるなら、依頼主から届け先までの荷物を届けるための最適ルートを生成して、ジョギングついでに軽い荷物を届けるサービスを作ったら、ひょっとしたら日本でも流行るかもしれない。平均スピードや習熟度に応じて料金設定を変えたりとか、ランナーが希望する負荷レベルに応じて、承認する荷物の重さを変えたりとか。街中にカッコいいデポ(集配センター)があって、スマホとかでサインインして荷物の受け渡しと水分補給やら着替えとかできたらウケるんじゃね?

→Goodgym

Skillshare https://www.skillshare.com/

skillshare
Skillshareは、2011年に創設された、今回紹介されたサイトの中では最も古い学びのマッチングサイトだ。サイトには、誰でも自分の主にクリエイティブなスキルを他の人に伝えるオンラインビデオコースを開設することができる。生徒は、月額約10ドルの会費を支払うことで、全てのコースを視聴することができる。生徒から集められた会費は、登録者数に応じて教師に分配され、Youtubeでビデオコースを公開して広告費を得るよりも、遙かにいい収益が得られるそうだ。現在150以上の国に住む約100万人の生徒と、1,000人の先生、50,000種類のコースが登録されているという。開設当初は、オフラインで行う授業を告知して生徒を募集するサイトとしてスタートしているようで、日本のネットではそのように紹介されていることが多いようだが、現在公開されている授業はオンラインで完結するものがメイン。オンライン教育は、主に教育の機会均等の観点から近年注目の集まる分野で、ハーバード、スタンフォード、UCバークレー、MITなどの名だたる有名大学も学位まで取れる無料のオンラインコースを多数開設している。このようなオンラインコースは、”Massive Open Online Courses”の頭文字をとってMOOCと呼ばれている。Skillshareのユニークな点は、誰でもが教師になれる点で、サイトのキャッチコピーにもある”Everyone Has Something to Share With the World”「誰でも、世界にシェアできる何かを持っている」は、シェアリングエコノミーの根幹をなす思想でもある。

下記のリンクから、1ヶ月無料で試すことができるので、興味がある人は是非。
→Skillshare1ヶ月お試し

料理教室なんかは、英語が分からなくても理解しやすいのでオススメかも。このピザレシピなんて、すごく美味しそう。今度試してみようと思う。

Jobbatical https://jobbatical.com/

jobbatical
Jobbaticalは、僕が今回最も感動したシェアリング関連サービス。世界中からプロジェクト単位の短期滞在型の求人が集められているグローバル求人サイトだ。これからの世界では、こういうサイトを活用して渡り鳥のように世界中を行き来する新しいクリエイティブ層が増えていくはずだ。現に、僕の知っているAirbnbゲストには、フランスのIT企業に勤めながらタイからリモートで3ヶ月のプロジェクトに参加して、次は日本にしばらく滞在し、日本に飽きたらシンガポールの支社にしばらく席を置こうと思っている、なんて人だっていた。Omiyaget.comは、これから増えるであろう彼らのような世界市民が、移動を楽しみながら新しい商品を探し出して、人と人とをつなげながら副収入を得られるサービスになって欲しい。今のところJobbaticalでの求人のほとんどがプログラミング系だけど、例えば日本語教師や日本料理店の求人だとか、日本人ならではのスキルが他の地域で求められるケースだって増えるはずだ。日本に限らず、一歩自国を出たら、自分が当たり前だと思っていたスキルが人々の役に立つことは大いに考えられる。シェアリングエコノミーの魅力の一つは、これまでには思いつかなかったようなエリアで、必要とする人と提供できる人のマッチングが可能になることで、新たな経済活動のチャンネルが有機的に広がっていくことだ。Jobbaticalのようなサイトを厳密にシェアリングエコノミーに分類していいのかは疑問があるが、ネットの力が可能とした新しい世界を予感させる、面白いサイトだと思う。このように、ビジネスとレジャーを掛け合わせたような旅を、businessとleisureを組み合わせた造語でbleisureといい、Airbnbでは今後のトレンドとして予測している。

まとめ

Skillshareのコピーが言うように、誰もが世の中に「シェア」できる価値を持っている。自分ではたいした価値を見いだせていなかった身の回りに有り余る商品やスキルを、世界規模でマッチングを行うことでそれを必要としている人に届けられる世界がそこまで来ている。サンフランシスコで開催された去年のAirbnb Openでは、ベイエリアのスタートアップシーンが「次にシェアできるもの」を探して切磋琢磨している様子をうかがうことができた。今年は、去年のように「シェア」の本質に切り込んだ話は聞くことができなかったものの、そういったシーンから生まれ、確実に一般に浸透しつつあるシェアリングエコノミーの興味深いサービスを知ることができた。若干変化球が多いような気もしたけど、多岐にわたった各分野で、それぞれ特徴のあるサービスが次々と生まれているのは、シェアリングエコノミーのムーブメントがさらに一段階前進したことを確実に示している。また、こういったサービスを通じて、国境がどんどん無意味なものになり、世界があるレイヤーで一つになり始めている。そんな中で、僕は日本のシェアリングエコノミーサービスのほとんどが、海外のサイトを日本向けにカスタマイズして、国内のニーズだけを囲い込んで良しとしていることを残念に思っている。新しいアイディアを規制することで安心を留保する日本的なやり方のせいで、「シェア」に関しては、日本はほとんど鎖国状態だ。Airbnbに関する議論だって、「これまでにはないトラブル」にばかり注目が集まり、「これまでにはない価値の創成」について語られる場が少ないように思う。僕がOmiyaget.comでやろうとしていることも、日本的な視点から言ったら突っ込みどころ満載の危なっかしいサービスだけど、これからどんどん現実化されていくであろう新しい社会では、普通に受け入れられる時が確実に来ると僕は考えている。今回紹介したようなサイトを見ていると、そのタイミングは今ではないかもしれないけど、かなり近づいてきているとひしひしと感じる。今回のセッションで紹介されたようなマニアックなサービス以外にも、普通に面白いシェアリングサービスは沢山あるので、また機会をみて紹介していきたいと思うのでお楽しみに。