DAY11-13:PARIS ~AIRBNB OPEN

Airbnb Open

今回の旅が可能になったのは、今年はパリで開催されたAirbnbホストの祭典、Airbnb Openに招待してもらったからだ。

このblogでは何回も紹介しているけど、念のためもう一度解説すると、Airbnbとは自宅の使っていない部屋や、利用していない時期の別荘を旅行者に貸し出すサービスで、これまで使われないまま独占されていた余剰リソースを共有して、新たな価値を生み出すシェアリングエコノミーの代表サイトだ。使わない時だけ自由に貸したりやめたりできるので、豪邸やツリーハウス、城から島まるごとまで、ユニークな場所に泊まることもできるのが特長だ。僕も、今回の旅で、オランダの風車や、セーヌ川に停泊するハウスボートに宿泊した。また、その時価総額はヒルトンやマリオットグループのそれを超える240億ドル(約2兆円)で、シリコンバレーでも最も急速な成長を見せたwebサービスの一つだ。

今は収益を目当てに投資物件として誰も住んでいない何件もの”home”を運用しているような人も多いのだけど、Airbnbのもう一つの特長は、ホストとゲストという形でこれまでにはない人の出会いを生みだしたことだ。僕は、そしておそらく多くのユーザーが、このことこそがAirbnbを使って旅をする最大の魅力だと思っている。世界中のどこに行っても、僕のことを迎え入れて、その街のことを教えてくれるホストがいる。サイトのキャッチコピー”Belong Anywhere”は、そんな新しい旅の形を表した言葉だ。Airbnbは、人と人とのつながりが生み出す価値から直接利益を生み出す、これまでにない新しいタイプの企業で、Openでの基調公演を聞いても、事業体としてより世界中に広がる一つのコミュニティーであろうとしていることが感じられる。

“Airbnb’s mission isn’t your house. It’s hosts. It’s you. And you are part of a community that knows no boundaries of culture, country or generation. And hosts teach us that in the end, people are fundamentally good.”

「Airbnbが探し求めているものは、あなたの家ではない。それは、ホストであり、あなた自身だ。あなたは文化や国、そして世代による境界のないコミュニティの一部だ。そして、ホスト達が我々に教えてくれるのは、結局のところ、人々は根源的に善だということだ。」

この「人々は根源的に善だ」という宣言は、去年サンフランシスコで開催された第一回のOpen(これまでも関係者を招いたクローズドでのカンファレンスは数回開催されているそうだが、去年のサンフランシスコ大会が、一般ホストから参加者を募った初のOpenで、僕は数少ない招待客として参加させて貰う栄誉に預かった)での基調講演をそのまま引き継いだ、Airbnb、そしてシェアリング・エコノミーの核をなす重要なメッセージだ。僕はAirbnbのCEO、ブライアン・チェスキーのこの言葉を、世界中から集まった同じような考えを持つ1,500人のホストと共に聞き、このコミュニティに属していることの力強さと喜びを分かち合った。そして今年もまた、このコミュニティの仲間と共に過ごすため、パリまでやってきたのだ。特に約束をしていた訳ではないけれど、去年サンフランシスコで出会った何人かの仲間とは運命的な再開を果たし(大げさに聞こえるかもしれないけど、世界の向こう側の6,000人もの人たちが集まる会場で、たまたま前後の座席に座っていたりすると、そうも感じてしまうのだ)、そのサイズを1年で4倍にも成長させたコミュニティの大きな前進を祝った。

考えてもみて欲しい。ほんの数年前まで、自宅に見ず知らずの他人を招き入れ、宿泊させるなんてことが、どれだけ「危険な」ことだと思われていたか。もちろんトラブルで嫌な目にあった人も0ではないけど、多くののホスト仲間が口をそろえて言うのは、「ゲストはいい人たちばかりで、今まで一番良くなかった時でも、別に悪い人ではなかった」ということだ。まぁ、そんなことを言えるのも、そのホストがいい人で、また人との出会いが好きだからに他ならないわけで、そんなホストが世界中から集まるAirbnb Openは、もう会場の空気からしてポジティブなエネルギーにあふれていて、とにかく雰囲気も居心地もいい、誰に話しかけてもすぐに仲良くなれる楽しいイベントなのだ。

Openの魅力はそれだけではない、会期中、今年は100を超える教育プログラム、セミナーが開かれ、おもてなしのテクニック、収益を最大化する運用術などホスティングの技術だけでなく、コミュニケーション術やインテリアコーディネイト、またはヨガまで習うことができる。僕はシェアリング・エコノミーの最新動向に関するセッションを受けてきたので、また別の記事でレポートしたいと思う。

そして、僕のOpen参加の最大のミッションは、ここに集まるホスト達にOmiyaget.comをプレゼンして、彼らの反応を見てみることだ。Openの最終日の14日は、午前中はグループに分かれて地元ホストの案内でパリ観光をした後、夕方のクロージングパーティまで時間が空いている。Openで出会った人を誘って、僕が泊まっているハウスボートのデッキで船上ガレージセールを開こうと思ったのだ。残念ながら、この計画は13日の夜に発生したパリ同時多発テロによって、不可能になってしまった。このような希望にあふれるイベントが、大勢の人がなくなる悲しい事件により幕を閉じざるを得なくなってしまったのは、とても悲しいことだ。僕はこの夜のことを思い出すと、それがこれからの世界を予兆する最もポジティブな側面と、最もネガティブな側面が同時に顔を見せた、象徴的な夜のように思えてきてしまう。

僕にとって救いに思えたのは、そのポジティブな側面を司るホスト仲間達が、このような悲劇を前にもうちひしがれておらず、むしろこのような時だからこそ、人の根源に存在する善を信じ、人と人の結びつきが紡ぎ出す希望に光をあてようとしていたことだ。事件の後、お互いの安否を確認しあうメールの中で、一人のホストが送ってくれたメッセージを引用して、この記事を終えたいと思う。

Nights like tonight make you stop and reflect. You are forced to think about what is important and what is not–what kind of world do we live in and what kind of world do we want to live in; and what is our role in it.
このような夜は、立ち止まって考え直してしまう。何が重要で、何が重要でないか、私たちがどのような世界に生きていて、どのような世界で行きたいと思っているか。そして、その中でどのような役割を担うことができるか。

中略

People can’t hate people who break bread (they sometimes make themselves) with them.
人は、一緒にパンを分けたり(時には一緒に焼いたり)した人を憎むことはできない。
People can’t hate the people sleeping in the room next door or across the hall who offered them a clean room to sleep in.
人は、隣の部屋で寝ている、自分にキレイな寝床を用意してくれた人を憎むことはできない。
People can’t hate people who freely give the keys to their home. People can’t hate people who offer them a place to belong.
人は自分を家に迎え入れ、居場所を提供してくれる人を憎むことはできない。

My heart is broken over the horrors of this evening, but, it is also full from knowing that I belong to a community whose values are centered on the belief in the basic and fundamental kindness of all of us and whose mission is to create a world where we all belong..
私の心は悲しみに沈んでいるけれど、同時にどんな人々の心の奥にもある親切さを信じ、どんな人でもそこに居場所を見つけられるようにしたいと考えるコミュニティの一員であることを思い、満たされてもいる。